2022年12月29日

オー・ヘンリー「結末のない物語」●本



初出は不明。朗読時間約26分。つまりは、神も仏もない世界で、搾取している富裕層連中は、孤児院に火をつけたり、所持金目当てで盲人を殺してる輩よりもよほど悪どいということなのです。ちなみに額縁写真で登場する英国のキッチナー将軍は一週間を6ドルで過ごすヒロインを間一髪で助けますが、彼はホームズ、ワトスンと同世代です。ワトスンは戦地で一緒だったかも。では頭脳警察「さようなら世界夫人よ」(1972年)をどうぞ。



  


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2022年12月26日

大阪圭吉「ポケット日記」●本



1941(昭和16)年「ユーモアクラブ」12月号初出。朗読時間約14分。途中から多分ネタバレする(ほとんどの人がオチがわかる)構成になっていて、そこから先は聴いていておかしくてたまらない。読者の気持ちのコントロールも含めて大阪圭吉氏の茶目っ気の世界なのだと思う。厳しい戦時下に贈る心ほっこりの愛すべき笑いのプレゼント。それにしても、通勤のバスをやめて歩くことにした若旦那の節約と健康とオトコ心。80年前も今も何も変わってません。



  


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2022年12月06日

横光利一「蛾はどこにでもいる」●本



1927(昭和2)年「文藝春秋」10月号初出。朗読時間約30分。テキストが表示されるスタイルも便利です(青空文庫テキストを確認用に見なくても済むし)。冒頭、今しがた亡くなった妻、その壁には生前に妻の血を吸った蚊が止まっている。もう、この感覚がすべてです。これがやがて幾度も訪れる蛾になり、訪ねてくる美しい女になり、哲学なのか怪談なのかホラー増し増し妄想ラブストーリーなのか、頭の中でグルグル巡り巡り、いつしかええいままよと金縛りから力づくで逃れるごとく現実にマグロの刺身と共にヘビーに着陸する物語。MacBookに映るテキストに身を乗り出すほど面白かったです。



  


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2022年11月03日

大阪圭吉「なこうど名探偵」●本



1934(昭和9)年「新青年」7月号初出。朗読時間約30分。生き返った死人。トマト泥棒。安楽椅子探偵誕生。ブーメラン効果的中。男気の結末。温情探偵に変身。老兵は去るのみ。寂しいハッピーエンド。でも、話の途中で帰路の女房がなんとなく嬉しげにはしゃいでた図が想像できて、それがちと寂しくて小憎らしいっすかね。



  


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2022年10月26日

山川方夫「はやい秋」●本



1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」9月初出。朗読時間約27分。クライマックス、思わず聴いてた耳を疑い目で追ってた青空文庫のテキストを二度見して、新喜劇のごとく椅子から落ちそうになったよ。古い仕掛けながら油断してたわ〜、構成がうますぎるわ〜。山川作品、こういうヤリクチもありなのか。手段を選ばんな〜。久しぶりに「えっ!」と鮮やかに騙されたい方はぜひぜひ。(宮崎駿監督モノより老成してんだよ〜)



  


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2022年10月13日

蘭郁二郎 「大宮博士の事件」●本



1939(昭和14)年「小学六年生」6月初出。朗読時間約25分。少年探偵王シリーズ第3弾。子供向けで聞きやすいので油断してたら犯人の動機がわからない。どうも聞き漏らしたか。と言っても聞き直す気もわかず。本作もホームズばりの少年探偵の推理力が冴え渡るのですが、僕の推理力は名探偵に遠く及ばずなのでした。



  


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2022年10月11日

山川方夫「十三年」●本



1960(昭和35)年「宝石」2月初出。朗読時間約11分。背景こそ違え骨子はいつの時代でもあり得る話です。プロセスも結論もゾッとするものからハッピーエンド、オカルトホラーまで自由自在。マジックのタネと同じくマジシャンの料理によって多種多様な味になる素材です。その意味ではこれは一番スタンダードな展開に落ち着いたなぁという感じです。夫人はどんな気持ちで嘘をついたんでしょう。優しさなのか自衛なのか、もっと別の気持ちも揺れ動いたのかなぁ。


  


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2022年10月01日

菊池寛「マスク」●本



1920(大正9)年「改造」7月号初出。朗読時間約19分。このタイトルはイマドキと聞いてみたら当たりでした。東京で1920年に流行ったスペインかぜのピークと収束とマスクするしないの葛藤の話。まさに100年後の自分たちのコロナ暮らしと笑ってしまうほどなんも変わりません。黒いマスクとかもしてるし。ほんの20分、ぜひ一聴を。



  


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2022年09月29日

柳田国男「おばけの声」●本



1931(昭和6)年「家庭朝日」8月初出。朗読時間約10分。人がほったらかしにしてたもの、一方から見てそのまんまにしてたもの、それが新しい視点から新鮮な光が当たるとまた輝きだす。そしてまたほったらかしにされて思考は止まって、また新しい人の手でキラメキだす。おばけじゃないけど坂本龍馬も維新後は忘れられてた存在。それを維新のヒーローにまで磨き上げるまで幾人の人の浮き沈みの研究と視点があったことでせう。にしても「おばけの声」って漫才にしたら老若男女が食いつく面白そうなお題っすよね。



  


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2022年09月21日

山川方夫「他人の夏」●本



1963(昭和38)年「中学時代 夏休み臨時増刊号」8月初出。朗読時間約14分。子供用の短編は聞きやすくていいっす。内容は自殺をめぐり今ではそれ言ってもいいの?っていう内容ですが、どうでしょう?漁師のお父さんの死に方も壮絶すぎてちょっと引きましたが。これも今ならバンされるかなぁ。掲載誌が掲載誌だもんなぁ。とりあえずちょっと過激な考えと残酷な発想で、横目で見てた他人の夏のひとつに触れる少年の夏を怪しく美しい夜光虫の光と共に照らすのでした。
  


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2022年09月20日

蘭郁二郎 「幽霊自動車の事件」●本



1940(昭和14)年「小学六年生」3月号初出。朗読時間約13分。犯人は!これはまさしく昭和の、それも戦後10年頃まで、遅くともオリンピック前までなら通用する事件簿ちゃうかなぁ。そして少年探偵王が瞬時に解決に導いた見事な一計は現在のコンビニでも採用されている防犯アイデア。少年探偵王シリーズ2作目も懐かし面白かった。子供向けのためか話が聞きやすくテキストがなくても朗読だけで充分。テンポのいいワクワク感だけでもぜひ。
  


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2022年09月16日

蘭郁二郎 「温室の怪事件」●本



1939(昭和13)年「小学六年生」4月号初出。朗読時間約22分。ホームズ系の子供向け短編推理です。大人はどのあたりで犯人がわかるか、事件の全容のどれくらいまで読めたかが実力の証明。みんなで聞いて推理力勝負、楽しめます。
  


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2022年08月04日

大阪圭吉「寝台車事件」



1940(昭和14)年「週刊朝日」1月号初出。朗読時間約28分。新婚旅行の寝台列車で起こる思い違いだと思ってトラブルになったことが実は思い違いじゃなく夜が明けて真実にたどり着いたらトンデモナイ大物が出てきたの、開戦前ならではのお手柄ミステリー。けど、なんとなくストレートで大阪作品としては物足りなく。初々しく可愛いオチなんすけどね。




  


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2022年07月28日

吉行エイスケ 「東京ロマンティック恋愛記」



1931(昭和6)年「近代生活」4月号初出。朗読時間約17分。作家の吉行淳之介氏、女優の吉行和子氏のお父さんです。上手いなぁと感心する比喩と形容詞の嵐で、コンパクトに済む言葉がなかなかなかなか。その一個一個は素敵なんすけど隙間なく連続攻撃されると「素敵」に打たれすぎたパンチドランカー状態で、今がどんな状況なのか迷子になって、終わった時になんのこっちゃとなってしまうのでした。ま、単にこっちの受け取る感受性が貧弱なだけっすが。嗚呼、豊かさってなんだろうなぁ、と91年後のため息。




  


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2022年07月24日

モーリス・ルヴェル「老嬢と猫」



1927(昭和2)年「新青年」6月号初出。朗読時間約22分(後に朗読動画が削除)。リビドーと信仰が、肩寄せ生きる仲を引き裂く話。その結末は闇と光。浄土真宗で良かったなぁ。ブラックです、ぜひ。




  


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2022年07月16日

芥川龍之介 「老年」



1914(大正3)年「新思潮」5月初出。朗読時間約14分。なんのこっちゃわかりませんが、文章がめっちゃ上手いのはわかる。芥川22歳の作品らしいです。しみじみなのかわびしいのか人生も季節も冬だから仕方ないっす。春待ちとか言ってるようじゃまだまだ未練すね。




  


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2022年07月10日

久生十蘭「黄泉から」



1970(昭和45)年「久生十蘭全集」1月より(初出年月わからず)。朗読時間約38分。主人公の名前が魚返(おがえり)光太郎。初めて聞く名字に惹き込まれ。いい名前ですよね。しかし、この男、変にクール。この性根は、ま、ほんわかムードで終わってるけど、死んでも治んないでしょう。人間そんなもんだし、それで良しと思うし、悪い事だとは思わないけど、そうは思わない、間違っていると考える人も多いので困る。ジャングルで雪を降らせたと描かれる「幾億幾千万とも知れないかげろうの大群」は例えばこんな感じかなぁ。だから僕はこの結末、あんまり何も感じなかったのです。




  


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2022年07月06日

岡本かの子「過去世」



1937(昭和12)年「文芸」7月初出。朗読時間約35分。知らなかったけど岡本かの子氏は岡本太郎氏のお母さんです。なんとめっちゃ面白い。ジョン・ウーの三すくみ拳銃トライアングルに似た緊張からほとばしる耽美の世界、その結末が語られるラストの一言に呆然脱力。書くほど作品の魅力から離れて、とてもこの感覚を伝えきれないのでご自分の目と耳で味わってください、ぜひぜひ。




  


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2022年06月30日

大阪圭吉「恐ろしき時計店」



1940(昭和14)年「キング」7月号初出。朗読時間約27分。珍しくはじめのあたりで全部わかっちゃいました。静かなる情報戦。マジびっくり。悔しかったのはラストのオチ。これが本分なのにすっかり忘れてた。ま、覚えていても答えられなかったけど。テイストは「プラダを着た悪魔」(2006年デヴィッド・フランケル監督)のラストのごとく(気分的にね)、です。




  


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2022年06月24日

芥川龍之介「鼻」



1916(大正5)年「新思潮」2月初出。朗読時間約22分。「人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥いれて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。」(本文から引用)これを「傍観者の利己主義」というのだそうで、現代ではその感情を吐き出す道具が当時と比べて多数取り揃ってる、怖いっすね。さて立ち直れるのかな、現代で。




  


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2022年06月14日

大阪圭吉「刺青のある男」



1940(昭和15)年「キング」6月号初出。朗読時間約22分。キマしたね〜、途中まで読者の推測通りにドキドキと事は運んで、裏切って、さらにもうひとひねりの展開、そして伏線拾いのオチ。これぞ大阪作品、なんですがラストのオチの一言の意味がわかりません。わかったらきっともっと面白いはず。悔しいです。




  


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2022年06月08日

大阪圭吉「告知板の謎」(発表時のタイトルは「告知板の女」)



1939(昭和14)年「新青年」10月号初出。朗読時間約33分。東京市があった時代なんすね。懐かしい告知板が主役となった瓢箪から犯罪現場というか告知板ロシアンすごろく。面白かったかと聞かれたら「期待したほどは」ですが、ま、懐かしかったっす。




  


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2022年06月01日

与謝野晶子「食糧騒動について」

食糧騒動について

青空朗読より与謝野晶子「食糧騒動について」。1918(大正7)年「太陽」9月初出。朗読時間約18分。与謝野さん、怒ってはります。軍閥の内閣、総理、ボロカスです。自己満の富裕寄付女子もボロカスです。そうじゃないだろと怒ってはります。40歳の頃です。当時の与謝野晶子と言えば、その発言力、発信力、影響力は現代で言えば誰ほどに相当するもんでしょうね。




  


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2022年05月31日

坂口安吾「影のない犯人」



1953(昭和28)年「別冊小説新潮 第七巻第一二号」9月15日発行。朗読時間約39分。70年前に早くも医療ツーリズムの考えを金儲けのアイデアとしてさらっとでっち上げてるのでした。それと並んで「剣できたえたこの身体はヒロポンなぞうたなくッてもミズミズしく若返るのだ。」という心の叫びも。ヒロポン(覚醒剤)絶賛OKの時代だったんすね。なんてアンバランス、なんと出鱈目。この感覚がラストの戦争批判の皮肉の一行へ。ほぼ舞台です。




  


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2022年05月15日

中島敦「狐憑」



1942(昭和17)年「光と風と夢」7月15日初版発行。朗読時間約20分。これはある流行作家の残酷物語、いやあらゆる流行創作家の栄華盛衰の例え話なのかと。憑かれてんだか突かれてんだか疲れてんだかで妬まれ憎まれ疎まれネタ枯れの衝撃のラストへ。




  


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2022年05月10日

芥川龍之介「運」



1917(大正6)年「文章世界」1月初出。朗読時間約26分。時は平安なんすかね、京都清水さんの参道の店で陶器師の老人が青侍に語る昔話。めっちゃ美女が清水の観音様に願掛けてお籠りをするところから始まる八坂さん殺人、五条京極逃亡、上前を撥ねて運をつかむ話。さて、この美女が手に入れた運は。反発する青侍と老人陶器師。あしたはどっちだ。




  


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2022年05月06日

フランツ・カフカ「最初の苦悩」



1921年初出。朗読時間約10分。天才が我にかえる時、ということか。機嫌良く飛んでた飛行機がふと「こんな重い体が飛ぶわけない!」と気付いた時の恐怖のような。欲と道連れなら解決も容易い。けど、ガチ純粋はタチが悪い。悩みを抱えて狂うか、受け入れて凡庸に生き延びるか、そんな話とちゃうかなぁぁぁぁぁ?




  


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2022年05月04日

寺田寅彦「化け物の進化」



1929(昭和4)年「改造」1月初出。朗読時間約39分。講義です。面白い授業です。冴えてる時に読み聞きお薦めです。「化け物」は宗教であり科学であり芸術である。ぜひ。





  


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2022年05月02日

大阪圭吉「カンカン虫殺人事件」



1932(昭和7)年「新青年」12月初出。朗読時間約39分。久しぶりの大阪作品ですが、個人的にはなんか「らしくない」展開にがっかり。普通やん。というわけで聴いてる途中にちょっとうつらうつらしたのでした。




  


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2022年04月26日

牧野信一「好色夢」



1935(昭和10)年「中央公論 第五十巻第十号」10月1日初出。朗読時間約27分。なんの話やねん。キャストは高峰秀子、南田洋子、加賀まりこ、石坂浩二でいかがっすか。もちろん若き日の、ですけど。年齢の釣り合いは分かりません。




  


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